カテゴリー
Business Life Trend

世界で広がる新たな働き方「ギグエコノミー」とは?

アメリカから始まり、現在は日本も含め世界中に広まっているギグエコノミー。特に、インターネット経由で仕事を依頼発注する新しい働き方は、場所や時間の制約がなく、新しい働き方として需要が高まっています。

今回は、新しい働き方ができるギグエコノミーについて、その未成熟市場のメリッド・デメリットも含めて紹介します。

 

目次
  1. ギグエコノミーとは?
  2. ギグエコノミー、シェアエコノミーの違い
  3. メリット、デメリット
  4. ギグエコノミーによる新たな経済格差
  5. まとめ

 


ギグエコノミーとは?

ギグエコノミー (Gig Economy)とはインターネットやスマートフォンのアプリなどを通じて単発の仕事を受注する働き方のことで、企業に雇用されることなく、一時的、単発の仕事を主に「非正規雇用」や「個人事業主」として請け負う働き方です。

ギグエコノミーの例として代表的なものは、ウーバー(Uber)やリフト(Lyft)などドライバーや宅配デリバリー、その他にも料理や掃除などの家事サービス、プログラミングやアプリの開発、翻訳といった専門スキルを必要とするものまで幅広くあります。

さらに、ギグエコノミーはテクノロジーの活用によりグローバルな領域でのビジネス展開が可能なため、企業は世界中の労働市場から必要な人材を見つけることができ、人材不足に悩む企業にとっては重要な役割を果たしています。


ギグエコノミー、シェアエコノミーの違い

ギグエコノミーは、自分の労働力や時間というリソースを提供するのに対し、シェアリングエコノミーはモノ・場所をシェアするもので、日本では個人のスキルのシェアも含まれます。

また、クラウドソーシングは企業(発注主)が不特定多数の外部のワーカー(受注者)に対して、業務を発注する業務形態のことであり、ギグエコノミーよりも広義的な意味合いを持ちます。クラウドソーシングはギグエコノミーのように単発と継続の区分はありません。


メリット、デメリット

 メリットデメリット
企業側(発注側)①人件費削減
ギグワーカーは基本的に業務委託契約を締結であるため、従業員のような人件費(社会保障や厚生年金、福利厚生の費用)が発生しない。

②多様な人材の確保
オンライン上で求人を出せるため、世界中のリタイアしたベテランから若手に対して必要なスキルを求めることが可能。
①スキルの自社蓄積が難しい
従業員ではなく、外部であるギグワーカーに業務を委託発注するため、社内に知識や技術の質を担保することが難しい。そのため、必要なスキルを常にギグワーカーに依存することになる。

②機密情報の漏洩
自社従業員ではないため、ギグワーカーが秘匿情報や機密情報を流出、またはSNS上での悪い口コミによる企業イメージ低下の可能性もある。

③ギグワーカーの質・管理の難しさ、不明確な責任所在
ギグワーカーが行った業務上の過失リスクについて発注側の企業が責任をとるべきか、ギグワーカーが責任をとるべきか責任の所在を明確にし、適正に対処できなければ企業のイメージダウンに繋がる。また過失がおきないように雇用していないギグワーカーへの規定の工夫や管理が必要。
ギグワーカー(受注側)①時間・場所にとらわれない自由な働き方
自分の生活スタイルにあわせた働き方ができるため、本業でも副業としても柔軟に働くことができる。

②自分の好きな仕事、得意分野のみに特化した働き方
本業で得たスキルや知見をギグエコノミーで活かし、さらにスキルを成長させるなど、起業やフリーランスとしての経験値を増やすことが可能。
①スキルアップ・昇格の機会が少ない
単純労働が多いため正規雇用と異なり、働き続けても報酬や昇格の機会がない。また、業務形態が限られたスキルや内容のみに偏ることが多いため、ギグワーカー自身が積極的に空いた時間で知見やスキルを高め、できることを増やしていかなければ、正規雇用としての本業で働ける場所が減る。

②未成熟な社会保障制度
業務上で怪我をしても労災のサポートをうけることができず、負担額が多くなり貧困に陥る可能性がある。

③守られない雇用形態
正社員ではないため、発注がない限り稼ぐことが難しく、収入の目処や将来の安定した収入の見込みがない。

しかし、カリフォルニア州ではギグワーカーを含む独立事業主の定義を厳しくする新法「AB5」が今年から発効し、2020年6月11日にはカリフォルニア州公共事業委員会(CPUC)は、単発や短期の仕事を請け負う「ギグワーカー」に関する新法の下、ウーバー・テクノロジーズ<UBER.N> やリフト<LYFT.O>などの配車サービスの運転手は従業員と見なされると発表したため、ギグワーカーの雇用形態に対する改善の動きが少しずつ見られています。


ギグエコノミーによる新たな経済格差

英オックスフォード大学インターネット研究所によると、ギグエコノミーの市場は1年で3割拡大すると試算し、プライスウォーターハウスクーパース(PwC)は、7年後には世界で37兆円の市場になると予測しています。また、ギグエコノミーの人材規模は約5300万人と、米国の労働力人口の約35%相当になり、ギグエコノミーの市場は非常に速いスピードで成長しています。

しかし、企業の仕事(発注)が増えなければ、世界中の安価なギグワーカーの働き手を利用する企業が増え、ギグワーカーの一人当たりの賃金が低下し、企業で正社員として働く労働者とギグワーカーの間には大きな貧富の差が生じる可能性があります。

多くのギグワーカーには社会保障や退職金などが適応されていないため、ギグワーカーは自身の将来について自衛する必要があります。

そのため、企業は人件費のかかる「終身雇用(従業員)」に比べ、「労働力不足を単発の低賃金で雇える使い捨て雇用(ギグワーカー)」であるという認識を変えなければ、柔軟な働き方ができるギグワーカーの未来や普及には限界があります。これを改善するためには、国レベルでギグエコノミーを推進するため、ギグワーカーに対する最低賃金設定や社会保障制度設定の見直しなどを行う必要があります。

特に、様々な事情で柔軟に働けるギグエコノミーの働き方を必要とし本業としているギグワーカーにとっては、例えば新型コロナウィルスにより仕事が激減してもそのサポートを発注企業から受けることはできません。さらに、リモートワークができない業務内容で、かつ家庭経済が厳しい場合は、コロナに感染していても自ら申告せず働き続けることを強いられる状況になるため、社会的にも悪循環になる可能性があります。

 


まとめ

日本ではいわゆるBtoB企業が主流で、得に大手企業は主に法人取引が中心で、個人との取引はまだまだデザイナーやソフトウェアの開発などの専門業務に限られています。

さらに、専門性の高い人材に仕事を依頼したいと思っても、人材発掘のノウハウ(品質の見極め、違約や損賠賠償が生じたときに個人には高額の請求をしていいのか等)がなく、躊躇する理由があるため「適切な人材が見つけにくい」という現状があります。

しかし近年、日本でも副業解禁の企業が増え、さらに少子高齢化により高齢者の就業機会の確保をする制度見直しが行われる見込み(2021年4月予定)もあるため、副業としてのギグエコノミーの市場が拡大する可能性はとても高いです。

そのため企業は、長期戦力で自社にスキルを蓄積できる従業員で本業の拡大をはかりつつ、本業以外の雑務をAIなどのコンピューターやフリーランス・ギグエコノミーなどの社外人材に依頼するなどギグエコノミー市場に参入する方法は様々です。

ギグワーカーの制度が近い将来改善され、うまく利用できれば、日本のような少子高齢化で人材不足になる国と、アフリカのように人口増加が著しい国の間で人材過多のバランスをとることができ、WinWinの働き方が可能になります。

作成者: Hannah

訪問国数は約30ヵ国、海外駐在経験もあり。世界のレア情報が新しいビジネスの「きっかけ」づくりに役立てればうれしいです。

コメントを残す