年々、技術の発展により、多くの単純作業が機械やAIが人の代わりに働くことができるようになっています。そして未来の私たちの仕事や働き方も大きく代わり、求められる人材も今までと大きく変わると予想されています。「ダブルメジャー制度で将来の仕事の可能性を広げる」で紹介したように、近年ではすでに多様なスキルを持つ人材のニーズが高まっています。
では、どういうスキルが求められ、または働く上で何が重要視されるのか?Oxford大学が発表した調査論文も合わせて紹介します。
21世紀型スキル(Assessment and Teaching of 21st Century Skills)とは?
21世紀型スキル(英:Assessment and Teaching of 21st Century Skills)とは国際団体ATC21sにより定められた、21世紀以降に必要とされるスキルです。
具体的に大きく、Learning Skills、Literacy Skills、Life Skillsの3つを組み合わせたもので、以前から世界で注目されており、今後、デジタル化が加速する中でより重要になるため、子供の学習場面でもすでに21世紀型スキルを意識した教育に取り組む学校や企業が増えています。
これらのスキルの特徴としては「テスト勉強のような学習」や「言われたことをする」スキルではなくて、いかに「アクティブ・ラーニング(積極的に理解し、行動すること)」をすること、そして課題を整理し、チームワーク、リーダーシップを発揮し様々な解決策を導き出すことです。
2030年に必要とされるスキル・知識・能力
2030年はどのような未来になるのかは誰にもわかりませんが、明確なのは「今よりも自動化が進むこと」です。
そこで2017年、世界最高峰のアメリカのハーバード大学大学で「2030年に求められるスキル・知識・能力」についての調査論文が発表されました。(※この調査は将来起こりうるグローバリゼーションや、人口増減、環境変化などの影響を踏まえていないものです。)
調査論文では以下の20のスキル・知識・能力が必要とされるであろうとされています。
順位 | スキル・知識・能力 | 詳細 |
---|---|---|
1 | Judgement & Decision Making | コストや工数を踏まえて適切な判断、決断を下すスキル。 |
2 | Fluency of Ideas | より多くのアイデアを生み出す能力。 |
3 | Active Learning | 現状、そして未来の課題解決へとつながる新しい知識を学ぶスキル。 |
4 | Learning Strategies | 学ぶ、または教える際に、状況に応じて適切な指導方法や学習過程を意思決定するスキル。 |
5 | Originality | 課題を解決するための新たな手法や、与えられた場面・状況に応じて独自の発想を生み出す能力。 |
6 | System evaluation | 目標達成のために、改善・軌道修正が必要なシステム・アクションに対する対策、または指標を特定するスキル。 |
7 | Deductive reasoning | 特定の課題に対して原則を適応し、道理にかなった答えを導き出す能力。 |
8 | Complex Problem Solving | 困難な課題を特定し、様々な解決策やその導入手段を発展させ、評価するために関連する情報を見直すスキル。 |
9 | Systems Analysis | システムがどのように機能すべきか、そして変化がオペレーションや環境などの異なる場面でどのように結果に影響をもたらすのかを見定めるスキル。 |
10 | Monitoring | 正確なアクションや改善策をとるために、自分自身または組織、他の個人のパフォーマンスを監視/評価するスキル。 |
11 | Critical Thinking | 論理的に、問題への取り組みや結果、解決策代替案などの強みや弱みを特定し、明らかにするスキル。 |
12 | Instructing | 他人に手法を教えるスキル。 |
13 | Education & Training | 個人やグループのためのカリキュラム、トレーニングプランなど、教育・指導手法の知識、そしてその効果測定の知識。 |
14 | Management of Personnel Resources | 人々が働くためのモチベーションアップ、教育、指導や、適確な担当振り分けのスキル。 |
15 | Coordination | 他者の行動との関係性を踏まえ、行動を調整するスキル。 |
16 | Inductive Reasoning | 一見関係のない出来事も含め、バラバラの情報に関係性を見つけ、組みあわせ、結果や原則を見い出す能力。 |
17 | Problem Sensitivity | 間違いや悪い影響をもたらす可能性がある事柄を見つける能力。 |
18 | Information Ordering | 特定の規則や決められたルールに基づき、物事や行動を特定の順番やパターンに整理、調整できる能力。 |
19 | Active Listening | 他人の発言に細心の注意を払い、適切なタイミングで質問をして理解を深めるスキル。 |
20 | Administration & Management | 製造方法、リーダーシップ、人材構造の可視化、人と資源の調整、戦略的計画、資源配分などを踏まえたビジネス・管理規定の知識。 |
特にアメリカでは近年では「対人能力」に重点を置く企業が増えています。
対人能力には
・相手の意見を正しく理解し自分の言葉で発信できる力
・調整力やチームワーク力
・教育する力
などがあり、さらにこれらに心理学の知識や人類学の知識も非常に重視されています。
今後、組織がデジタル化やコスト削減等を行う際に、多くの雇用削減をすることが予想されますが、社会的対人スキルは未来においても必要なスキルであることは間違いありません。
ニーズのある働き方、ニーズのない働き方
では、どのような働き方が必要とされ、または必要とされないのでしょうか?
求められる働き方をする人の例
・効率的かつ効果的に働けるように自ら日々工夫する。
・他人の意見を尊重し、必要に応じて調整や交渉が円滑にできる人。
・課題に直面した時、率先して改善策を考え、改善しようと挑戦する人。
・求められていることをきちんと理解し、それに応えられる人。
・どんなアイデアも無駄にせず、そこから新しいアイデアを生み出すことができる人。
・常にポジティブな人。
・自ら学び、常に新しい知識を身につけようと努力する人。
求められない働き方をする人の例
・言われたことだけをする人。
・同僚や上司とのコミュニケーションを大切にしない、相手を尊重できない人。
・課題や問題に直面したとき、失敗を繰り返さないように改善する取り組みをしない人。
・物事がうまくいかない時に、他人に責任転換をし、自らの反省やチームワークを大切にしない人。
・相手の気持ちを考えない発言をしたり、自分のストレスを仕事に持ち込み業務に支障を与える人。
・自らホウレンソウ(報告・連絡・相談)ができない人。
・自分の業務調整や管理を他人にしてもらわないと仕事がうまくできない人。
・自分または相手に適切かつ適度な業務分担ができない人。
・相手の話や、求められていることがきちんと理解できず、自己中心的な働き方をする人。
・新しいアイデアを頭ごなしに否定したり、そこから新たなアイデアを生み出そうとしない人。
など。
特徴としては「ロボットができない業務ができる人」であり、それは例えば、人間特有のコミュニケーションを使用した「相手の意見を尊重し、必要に応じて交渉や調整ができる対人能力」です。
求められない働き方は一見、驚くような非常識な働き方ですが、以外と会社に1人はいるのではないでしょうか?または自分がうまくて来ない時に、「ちゃんと教えてもらってないから」や「忙しいから」という言葉で他人に責任転換をして自分の根本の原因から逃げてしまう時はありませんか?
気をつけましょう。近い将来、ロボットの方が上手に働くことができるかもしれません。そうなると、上記に記載している「求められない働き方をする人」はまずは危機感を持ち、できることから一つずつ改善していく必要があります。
まとめ:今できること
将来のことは誰にもわかりませんが、いつの時代でも常に新しいことに挑戦する人材は貴重なのではないでしょうか? 常に最新情報を収集し、時代の流れを理解し、そして学び続ける姿勢を持つことが大事です。 特にデジタル化が進む現代の特徴は、「十分な教材や資料がすでにインターネット上に共有されている」ということです。 つまり年齢問わず自分の力で調べ、学び、スキルアップする人が年々増えているということです。 そして自分で挑戦し、成長するスキル自体はどのような仕事においても求められる人材になり、今後減少する雇用の中でも重宝される人材になるのではないでしょうか。